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文献資料

 
 D.ヘーゲル「小論理学」

 
SYSTEM DER PHILOSOPHIE

  ERSTER TEIL  DIE LOGIK  G.W.F. Hegel

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 1. D.ヘーゲル「小論理学」第1部有論
 2. D.ヘーゲル「小論理学」第2部本質論
 3. D.ヘーゲル「小論理学」第3部概念論

 第三版への序文
 この第三版では方々に多くの改訂がなされており、特に注意をはらったのは叙述を一層明確にすることであった。と言っても、これは教科書であり、摘要として用いられるのであるから、文体はあくまで簡潔で、形式的で、抽象的にならざるをえなかった。したがって、口頭の講義によってはじめて必要な説明が与えられるというこの書の性質は以前と同じである。
 第二版以来、私の哲学を批判したものが沢山あらわれているが、それらの大部分はそうした資格を大して持たないことを示しているにすぎない。多年考えぬかれ、研究対象および学問的要求にたいする最も真面目な態度をもって仕上げられた著作にたいしてこのような軽々しい応酬がなされるにいたっては、自惚や高慢や嫉妬や嘲笑などの醜い感情がそこからにじみ出ているのがみえすいて、およそ不愉快であり、まして教えられることなどは少しもない。キケロは言っている。
 「哲学は少数の批評者に満足して、大衆を故意にさけるから、大衆からは憎まれいかがわしいものと思われている。したがって、もし誰かが哲学一般を罵ろうと思えば、必ず俗衆の支持をうることができる」と。哲学を罵るに、その罵り方が馬鹿らしく浅薄であるほど、一般には受けるものである。というのは、卑小な反感というようなものは難なく共鳴できるものであるし、無知もわかりやすさの点では、これにひけはとらないから、この仲間となるからである。・・・・
この百科全書的な入門書は、先に述べたような性質を持っているために、これによって哲学を研究するのは容易でないのであるが、それにもかかわらず、その第二版が間もなく版を改めるにいたったということは、皮相浅薄な騒々しさのほかに、より静かな、よりやり甲斐のある研究が行われたことを示すものと思われ、意を強くするものがある。この第三版にも同じことを望みたいと思う。
                      ベルリンにて、1830年9月19日