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  文献資料

 2017年1月 付属資料 1.


 
         『資本論』 第1章 商品 第3節 価値形態または交換価値


    はじめに
  
    諸商品は、ある共通な価値形態、貨幣形態をもっています。
   ここでは、いまだかつてブルジョア経済学によって試みられたことのない、この貨幣形態の発生を証明するということ、
   したがって、商品の価値関係に含まれている価値表現が、どうしてもっとも単純なもっとも態容から、貨幣形態に発展したかを
   追求すること、これをもって、同時に貨幣の謎も消えてゆきます。

   もっとも単純な価値関係は、ある商品が、他のなんでもいいが、ただある一つの自分と違った種類の商品に相対する
   価値関係です。したがって、二つの商品の価値関係は、一つの商品にたして最も単純な価値表現を与えています。

   つまり貨幣形態という概念の困難は、一般的等価形態の、したがって、一般的価値形態なるものの、すなわち第三形態の
   理解に限られることになります。第三形態は、関係を逆にして第二客観的に、すなわち、拡大された価値形態に解消されます。
   そしてその構成的要素は第一形態です。すなわち、亜麻布20エレ=上衣1着 または A商品x量=B商品y量です。
   したがって、単純な商品形態は貨幣形態の萌芽(胚細胞)の形態です。





  第3節 価値形態または交換価値 抄録・要約 (2017.01.18)

  商品は使用価値または商品体の形態で、鉄・亜麻布・小麦等々として生まれてきます。これらのものは、二重形態、すなわち
 自然形態と価値形態をもつかぎりにおいて、商品の形態をもちます。
  もし諸商品が同一の社会的等一性である人間労働の表現であれば、価値対象性をもち、諸商品の価値対象性は、
 商品と商品との社会的関係において現われます。実際において、私たちは、商品の交換価値から、または交換比率から出発して、
 その中にかくされている商品の価値をさぐりえたのでした。ここから私たちは価値の現象形態にもどっていきます。

  諸商品は、ある共通な価値形態、貨幣形態をもっています。
 ここでは、いまだかつてブルジョア経済学によって試みられたことのない、この貨幣形態の発生を証明するということ、したがって、
 商品の価値関係に含まれている価値表現が、どうしてもっとも単純なもっとも態容から、貨幣形態に発展したかを追求すること、
 これをもって、同時に貨幣の謎も消えてゆきます。
  もっとも単純な価値関係は、ある商品が、他のなんでもいいが、ただある一つの自分と違った種類の商品に相対する価値関係です。
 したがって、二つの商品の価値関係は、一つの商品にたして最も単純な価値表現を与えています。(岩波文庫p.90)

 Ⅰ. 第1形態 : A単純な、個別的な、または偶然的な価値形態


   x量商品A=y量商品B あるいは、x量の商品Aは y量の商品Bに値する (亜麻布20エレ=上衣1着)

  <1.価値表現の両極、相対的価値形態と等価形態>
 
 一切の価値形態の秘密は、この単純なる価値形態の中にかくされています。
相対的価値形態と等価形態とは、相関的に依存しあい、交互に条件づけあっていて、離すことのできない契機です。
同時に相互に排除しあう、または相互に対立する極位です。すなわち、同一価値表現の両極をなしています。

  <2.相対的価値形態>

  a 相対的価値形態の内実(Gehalt:内容)

1. どういう風に一商品の単純なる価値表現が、二つの商品の価値関係にかくされているかということを見つけ出してくるために、
  価値関係を、まずその量的側面から全く独立して考察することになります。(岩波文庫P.92)

2. 亜麻布20エレ=上衣1着または=20着または=x着 となるかどうか、すなわち、一定量の亜麻布が多くの上衣に値するか、
  少ない上衣に値するかどうかということ、いずれにしても、このようないろいろの割合にあるということは、つねに、亜麻布と
  上衣とが価値の大いさとしては、同一単位の表現であり、同一性質の物であるということを含んでいます。
  亜麻布=上衣ということは、方程式の基礎(Grundlage:根拠)〔両極において、ある共通物(数学上でのいわゆる“未知数”)が
  存在いること〕となります。(岩波文庫p.93)

3. 亜麻布=上衣の方程式において両極関係にひそんでいる共通概念は、第1節に規定した「労働」の
  体化物〔Materitur:概念の実在物〕です。例えば、上衣が価値物として亜麻布に等しいとされることによって、
  上衣にひそんでいる労働は、亜麻布にひそんでいる労働に等しいことになります。このように、おのおのちがった商品の
  等価表現が、種類のちがう商品にひそんでいる異種労働を、実際にそれらに共通するものに、すなわち、人間労働一般に
  整約して、価値形成労働の特殊性格(spezifische Charakter)を現出〔もたらすこと〕させます。(岩波文庫p.95)

4. 上衣が亜麻布の等価をなす価値関係において、上衣形態〔上衣がもつ形式〕は、価値形態〔新たな価値の形式〕です。したがって、
  亜麻布商品の価値は、上衣商品の肉体(Körper:からだ・身体で、精神Geistに対する)で表現されます。すなわち、亜麻布の
  価値関係において上衣はこれと質的に等しいものとして、すなわち、同一性質の物とみなされます。
  というのは、上衣は価値であるからです。したがって、上衣はここでは価値の現われる物として、
  またはそのつかみうる自然形態で、価値を表示している物となされています。

5. つぎに、亜麻布は使用価値としては、上衣とは感覚的にちがった物です。
  価値としては、亜麻布は「上衣に等しいもの("Rockgleiches")」であって、したがって、上衣に見えることになります。
  このようにして、亜麻布は自分の自然形態とはちがった価値形態を受け取ることになります。
  亜麻布の“価値たること”〔Wertsein:価値存在〕は、上着との同一性(Gleichheit:同等性)の関係において
  現われます〔erscheinen:(本質は)現象する〕。(岩波文庫p.97)

  b 相対的価値形態の量的規定性

1. 価値形態は、ただに価値一般を表現するだけでなく、量的に規定された価値、すなわち価値の大いさをも表現しなくては
  なりません。上衣の商品種は、価値体一般として亜麻布に質的に等しいと置かれるだけでなく、一定の亜麻布量、
  例えば、20エレの亜麻布にたいして、価値体または等価の一定量、例えば1着の上衣が等しいと置かれることになります。

2. 一商品の相対的価値は、その価値が不変であっても変化します。また、その相対的価値は、その価値が変化しても、
  不変であることがあります。そして最後に、その価値の大いさとその価値の大いさの相対的表現とにおける同時的変化は、
  決して相互に一致するわけでありません。


  <3 等価形態>

1. 一商品、上衣の等価形態は、この商品の他の商品にたいする直接的な交換可能性の形態になっています。
2. 上衣なる商品種が、価値表現において等価の地位をとることになると、その価値の大いさは、価値の大いさとしての表現を
  もたなくなり、その価値の大いさは、価値方程式において、むしろただ一物の一定量として現われるだけです。
3. 等価形態の考察に際して目立つ第一の特性は、使用価値がその反対物の現象形態、すなわち、価値の現象形態となるということ、
  すなわち、上衣商品の自然形態が価値形態となります。

4. しかし、一物の属性は、他物にたいするその関係から発生するのではなくて、むしろこのような関係においてただ実証されるだけ
  のものであるから、上衣もその等価形態を、直接的な交換可能性というその属性を、天然にもっているかのように、見えることに
  なります。このことから等価形態の謎が生まれてきます。
5. 裁縫の形態でも、機織の形態でも、人間労働力は支出され、両者は人間労働の一般的な属性をもっています。
  そして、価値生産においては、この観点から考察されます。しかし、商品の価値表現においては、事柄は歪められます。
  亜麻布等価物を作り出す具体的な上衣の裁縫労働が、そのままで抽象的に人間的な労働の実現形態となります。
  こうして、第二の特性として、具体的労働がその反対物、抽象的に人間的な労働の現象形態となります。
6. 具体的労働、すなわち裁縫は、無差別な人間労働の単なる表現として働くことによって、他の一切の商品生産労働と同じように
  直接に社会的な形態における労働となります。こうして、私的労働がその反対物の形態、すなわち、直接に社会的な形態における
  労働となることが、等価形態の第三の特性です。
7. アリストテレスの天才は、彼が商品の価値表現において、等一関係〔Gleichheitsverhältnis:同等性関係〕を発見したことに輝いて
  います。

  <4 単純な価値形態の総体〔全体〕Das Ganze der einfache Wertform>

1. ある商品の単純な価値形態は、その商品の他のある異種商品にたいする価値関係に、またはこの商品との交換関係に
  含まれています。商品Aの価値は、質的にじゃ商品Bの商品Aとの直接的な交換可能性によって表現されています。
2. ある商品の価値は、「交換価値」として現示〔Darstellung:表現、演じること〕されることによって、独立的に表現されることに
  なります。したがって、商品は使用価値であり、また交換価値であるといったが、正確にいえば誤りでした。
  商品は使用価値または使用対象であり、また「価値」であるという表現が正確です。

3. 商品Bにたいする価値関係に含まれている商品Aの価値表現を、くわしく考察すると、その内部において、商品Aの自然形態は、
  ただ使用価値の姿としてのみ、商品Bの自然形態は、ただ価値形態または価値の姿としてのみはたらいていることが明らかと
  なりました。したがって、ある商品の単純な価値形態は、その商品に含まれている使用価値と価値との対立の単純な現象形態と
  なります。
4. 労働生産物は、ある歴史的に規定された発展段階で、商品に転化されます。商品の単純なる価値形態は、同時に労働生産物の
  単純な商品形態であり、したがってまた、商品形態の発展も価値形態の発展と一致するという結果になります。

5. しかしながら、一見すればすぐ単純な価値形態の不十分さが理解されます。この形態は、一連の変態〔Metamorphose:
  動物・植物の変態〕をへて、やっと価格形態に成熟してくる萌芽形態Keimformなのです。
6. 亜麻布と上衣など、個々の価値形態はおのずから〔von selbst:自分自身で〕、より完全な形態へ移行します。
  上衣のような第2の商品が他のどんな種類のものか、上衣か、茶か、コーヒーか、小麦か、鉄か、その他の何かということは、
  全くの偶然でどうでもよいことです。したがって、亜麻布が、他の商品種のどれと価値関係に入るかによって、それぞれちがった
  単純な価値表現が成立してきます。(岩波文庫p.98)

7. したがって、亜麻布との価値関係にはいる、可能な価値表現の数は、ただそれぞれちがった商品種の数によって
  制限されるだけです。すなわちその商品・亜麻布の個別的な(einfach)価値表現は、それぞれちがった単純な価値表現の、
  いくらでも延長されうる列に転化されることになります。

  以上、第1形態 : A単純な、個別的な、または偶然的な価値形態。


  Ⅱ. 第2形態 B 総体的または拡大せる価値形態

   z量商品A=u量商品B または =v量商品C または =w量商品D または =x量商品E または =その他
  (亜麻布20エレ=上衣1着 または =茶10ポンド または =コーヒー40ポンド または =小麦1クォーター
    または =金2オンス または =鉄1/2トン または =その他 )

  <1 拡大された相対的価値形態>

  拡大された価値形態:一商品、例えば、亜麻布の価値は、いまでは商品世界の無数の他の成素Elementen der Warenweltに
 表現されています。すべての他の商品体は亜麻布価値の反射鏡Spiegelとなっています。こうしてこの価値自身は、
 はじめて真実に無差別な人間労働の凝結物Gallerteとして現われてきます。
 
  〔亜麻布〕価値を形成する労働は、一切の他の人間労働がそれに〔亜麻布〕に等しいと置かれる労働として、表わされていて、
 それぞれの労働がどんな自然形態をもっていようと、それが上衣に対象化されようと、小麦や鉄または金等々に対象化されようと、
 これを問わないからです。こうして、亜麻布は、商品世界と社会関係に立ち、商品としてこの世界の市民となります。

  <2 特別な等価形態>

  上衣、茶、小麦、鉄等々というような商品は、それぞれ亜麻布の価値表現においては、等価として、したがってまた価値体として
 働いています。これらの商品のおのおのの特定なる自然形態は、いまでは多くの他の商品とならんで、亜麻布の一つの特別な
 等価形態です。同じように、各種の商品体に含まれている特定の具体的な有用な多種多様の労働種は、いまではそれと
 同じ数だけ、無差別の人間労働を、特別な実現形態または現象形態で示しています。

  <3 総体的または拡大された価値形態の欠陥>
 
  商品に表わされている人間労働は、その完全な、または総体的な現象形態を、拡大された総体的拡がりの中にもってはいるが、
 なんら統一的な現象形態とはなっていません。しかしながら、拡大された亜麻布の相対的価値形態は、単純な価値形態
 (第一形態)の諸方程式の総和において形成されています。すなわち、例えば、ある一人が自分の亜麻布を他の多くの商品と
 交換し、その価値を他の諸商品のなかに表現すれば、必然的に他の多くの商品所有者もまた、自分の商品を亜麻布と交換する
 ことになります。したがって、他の多くの商品所有者の価値を同一の第三の商品、すなわち、亜麻布で表現することになります。
 こうして、他の多くの商品所有者の諸商品は、自分の価値を等価形態にある亜麻布で表現することになります。


  Ⅲ. 第3形態 C 一般的価値形態
  

  上着1着 =    
 茶10ポンド =
 コーヒー40ポンド  =
 小麦1クォーター =  亜麻布20エレ
 金2オンス =
 鉄1/2トン =
 A商品x量 =
 その他の商品量 =

  <1 価値形態の変化した性格>

1.  諸商品は、その価値をいまでは第一に、唯一の商品で示しているので、「単純」に表わしています。また第二に、
  同一商品によって示しているので、統一的に表わしています。それら商品の価値形態は、単純で共同的であり、
  したがって一般的・普遍的となります。
   新たに得られた形態は、商品世界の諸価値を、同一な、この世界から分離された商品種・亜麻布で表現しています。
  こうして、この商品とあらゆる商品とに共通なものとして、商品を価値として相互に相関係させ、またはこれらを相互に
  交換価値として現われるようになります。

2. 商品世界の一般的な相対的価値形態は、この世界から排除された等価商品である亜麻布に、一般的等価の性質を
  おしつけることになります。機織という亜麻布を生産する私的労働は、同時に一般的に社会的な形態、すなわち、
  他のすべての労働との等一性の形態をもつことになります。
   また、一般的価値形態を成立させる無数の方程式は、順次に亜麻布に実現されている労働を、他の商品に含まれている
  あらゆる労働に等しいものとします。そしてこのことによって、機織を人間労働そのものの一般的な現象形態にします。

   <3 一般的価値形態から貨幣形態への移行>

   一般的等価形態は価値一般の形態ですが、他のすべての商品によって等価として除外されることによって、初めて
  商品世界の統一的相対的価値形態が、客観的固定性と一般的な社会的な通用性とを得ることになります。
   そこでこの除外される特殊な商品種の等価形態が、その自然形態のままで社会的に合生することにより、貨幣商品となり、
  または貨幣として機能することになります。この一定の商品、すなわち金が、歴史的に占有するに至ったわけです。


  Ⅳ. 第4形態 D 貨幣形態 
 

 亜麻布20エレ =   
  上着1着 = 
 茶10ポンド =
 コーヒー40ポンド  =
 小麦1クォーター =  金2オンス
 鉄1/2トン =
 A商品x量 =
 その他の商品量 =

1. 直接的な一般的な交換可能性の形態、または一般的な等価形態が、いまや社会的習慣によって、
  終局的に商品金の特殊な自然形態と合生しました。
   亜麻布20エレ = 金2オンス

2. 金が他の商品にたいして貨幣としてのみ相対するのは、金がすでに以前に、それらにたいして商品として相対したからです。
  すべての他の商品と同じように、金も、個々の交換行為において個別的の等価einzelnes Äquivalentとしてであれ、他の商品等価と
  並んで特別の等価besondres Äquivalentとしてであれ、とにかく等価として機能しました。しだいに金は、あるいは比較的狭い、
  あるいは比較的広い範囲で一般的等価allgemeines Äquivalentとして機能しました。

3. 金が商品世界の価値表現で、この地位の独占を奪うことになってしまうと、それは貨幣商品となったのです。そして金がすでに
  貨幣商品となった瞬間に、やっと第4形態が第3形態と区別され、一般的価値形態は貨幣形態に転化されます。

  つまり貨幣形態という概念の困難は、一般的等価形態の、したがって、一般的価値形態なるものの、すなわち第三形態の理解に
 限られることになります。第三形態は、関係を逆にして第二客観的に、すなわち、拡大された価値形態に解消されます。
 そしてその構成的要素は第一形態です。すなわち、亜麻布20エレ=上衣1着 または A商品x量=B商品y量です。
 したがって、単純な商品形態は貨幣形態の萌芽(胚細胞)の形態です。

                                                                        以上